今回は、しお学舎の尾上和寿教頭(以下:お)と夢古道おわせの伊東将志支配人(以下:い)の対談です。夢古道おわせのラウンジにて、話をしました。
い:ぼくら、10年目同士なんですよ。
お:夢古道が2007年の4月28日オープン、しお学舎が7月16日の開校。
い:そうそう。当時は尾上さんが35歳、ぼくが32歳。ちなみに誕生日は1日違い…(笑)。10年来、色々とコラボしてきたんです。
お:まず、うちの塩や塩サイダーを販売してもらってね。それからお母ちゃんのランチバイキングで塩をつかってもらって。あとは風呂上がりのソフトクリームに“塩かけホーダイ”!
い:あれは当時けっこう話題にもなって。新聞社さんにも取材いただきましたね。
-今でも、「ソフトクリームに塩?」ってお客さんに驚かれますよ。食べて「何これ、おいしい」って。評判よいです。
い:まだあるよね。塩づくりの過程でできるにがりを活用したにがり風呂。ランチバイキングをつくるお母ちゃんたちの住む天満浦集落で甘夏を一緒に収穫して、夏柑塩(なつかんじお)もつくってもらいました。
お:やったね〜
い:塩とお風呂。その根本にあるのが、尾鷲市の海洋深層水プロジェクト
。海底415mから引き上げた海水を活用する事業でした。まだまだ用途を模索中で、事業として成り立たせるために、もうあの手、この手という感じで。
お:今振り返れば、あっという間の10年。でも途中は長かったなぁ。ここに載せられないことも色々あるよ(笑)。
い:ありますねぇ(笑)。10年が経ち、ぼくらは“お風呂屋さん”としてようやく軌道に乗ってきたかなというところ。メディアで取り上げていただいたり、スタッフ一人ひとりが地道に取り組んできて、認知度も上がってきて。高速道路の延伸も一つの要因。おかげさまで、2015年は、来館者数が過去最高だったんです。
お:いいねぇ。
い:ただ、“海洋深層水のお風呂”という認知度はまだまだなのかな、と思います。紀伊半島唯一、実は面白いんだけどなぁ。
お:大まかなイメージでいうと、汲み上げた海水を塩分と水にわけるでしょう。しお学舎は、塩分から塩をつくる。夢古道は水をお風呂につかう。兄弟分のような関係なんだよね。
い:お母さんは一緒なわけだ。
お:なんでわざわざ水深415mから海水を汲み上げるの?って、聞かれるけれど。水がとてもきれいなんだよね。水がないと人も植物も生きていけなくて、でも現実には、大気汚染とか、重油タンカーが沈没したとか、色々あって… 俺はサーファーだからか、海ってあらゆることのはじまりだと思うんだけど。
い:そうですね。今後はもっと海洋深層水も打ち出していきたい、僕らのような事業者にくわえ、まちに暮らす人がふつうにつかう方法を考えていきたいですね、もっと。
い:ところで、しお学舎さんは今どうですか?
お:伊東くんが“風呂屋”であるように、僕らは“塩屋”なので。とうぜん、塩をたくさんの人に買って、つかってほしい。オンラインショップで毎日100個売れたらうれしいんですけど。よくをいえば、尾鷲に来てほしいんだな。古道センターを訪ねてさ、熊野古道を歩いてさ、おいしいご飯食べてさ、お風呂入ってさ、塩ソフト食べてさ。「おいしかったね、たのしかったね」って。そのとき「廃校になった小学校で塩つくってんねや」って、来てもらえたら見学歓迎やし。
-実際に、見学に来る人もいるんですか?
お:いるよ〜。「塩けんぴ食べて、来たくなったんです」って。うれしいよね。
-これからの10年については、一言ずつお願いします。
お:まずは三重県内の人に聞いたら、10人が10人知っているところを目指したいよ。「ああ、尾鷲ね」「しお学舎がんばってるやん、海洋深層水の塩でしょ」って。そのためには、夢古道おわせとももう一度コラボしたい。塩ソフトの“次”を一緒につくっていけたらいいよね。
い:「おわせ つつうらうら」をはじめて、あらためて「尾鷲ってどういうところ?」と考えていて。いなか過ぎず、とかい過ぎず。「中途半端だ」っていう人もいるけど、「バランスのいいまち」でもあるのかなって。
僕はお風呂屋ですから、番台に立つでしょ。いるんですよ。外から、何度も来てくれる磯釣りの人、山登りの人。ありがたいです。知ってもらうことで、今後は、もっと色んなひとが来てくれるんじゃないか。だって、尾鷲、ええとこやもん。
(写真と文:大越元)