<尾鷲よいとこ定食の店>
このコラムは、漁港の町で地魚料理を味わう冊子 「尾鷲よいとこ定食の店」との連動企画です。
夢古道おわせ支配人の伊東将志(いとうまさし)と、「尾鷲よいとこ定食の店」掲載店を訪ねて回ります。
第1回目は、国道42号線沿いにある「おふくろ」さんを訪ねました。かっぷくのよいお母さんが営んでいそうな店名ですが、切り盛りするのは尾鷲市出身の梅谷夫妻。20代前半で開業、今年25年を迎えます。
<おふくろの「海鮮丼」>
ゴー、ゴーッ。
生活そして物流の道として、自動車やトラックが往来する国道42号線。その通りぞいに、「おふくろ」はあります。
外階段を上り、店内で迎えてくれるのは、いけすの魚たち。
撮影していると、市外から訪れたというお客さんが、魚の種類を教えてくれた。
「これがおこぜや、山の神さんの好物やね。あっちはホンハゲ。ウマヅラハギとちごてな、煮るとおいしいのよ」
おふくろは、魚料理が看板メニューの定食・居酒屋さんです。
壁かけのメニューには、色々なエビ料理が並びます。オニエビの姿煮、ガスエビかき揚げ、赤足エビの造り。尾鷲は(漁業ないし市場の記事へリンク)多品種のエビに恵まれているそう。
ランチは14時半まで。13時を過ぎても、お客さんの足はたえません。店内には、一人で定食をあじわう男性も、女子3人でテーブルを囲む姿も。
伊東さんは、海鮮丼を。私は刺身定食を注文しました。
料理を待つ間、伊東さんが壁の魚拓を指さした。
「向こうに魚拓があるでしょ?ご主人の梅谷さん、本当に魚が好きなんだよね」
<尾鷲のこと>
お腹いっぱいになったところで、店を切り盛りする女将の梅谷さんに話をうかがいました。ここからは、伊東と梅谷さんの会話をほぼ書き起こしで紹介します。
いとう:夢古道おわせのホームページで、おふろからまちを紹介していこうということで、来させてもらったんです。
うめ:ありがたいよ、ほんまに。
いとう:お店、何年ですか?
うめ:自分22からはじめたから… 25年。ははは。22のときに結婚して、すぐやってん。
いとう:最初は魚も出してなかったんでしょう?
うめ: そう。うどんやどんぶりの店だったんよ。
魚を出しはじめても、ぜーんぜん注文なくて。ほとんどほうって(すてて)た。もったいなかったし、そろばん見たらきつかったよ。でもな、古いもん出して「おいしない」言われたらアウトやから。こらえた。
今は看板になってね。こだわっとるでね、毎日魚屋さん回ってます。
大将が魚を節(ブロック)で買うようになって。端の部分は刺身に出せんのよね。でも、食べたらおいしい。どうしよか、言うて海鮮丼をはじめたの。
外から来てくれた人は「尾鷲来たら、魚食べたい」言うもんで。尾鷲丸ごと、名物のエビも乗せて、今のかたちになったんよ。
いとう:はじめてお会いしたのは、僕が商工会議所に勤めはじめた頃… 20年前かな。大変な時期もあったんだよね。
うめ:最初は「税務署が来た!」と思ったんよ。「なんで家に?」って(笑)。それからの数年はまぁ、色々なことが重なって。ほんま死にそうやったよ(笑)。夜逃げせなあかんと思ったこともある。
いとう:今は、休日には予約をしたほうがよいかも。にぎわっていますね。
うめ:ほんとに。今は毎日いい意味でうれしいよ。
おかげなのが、2013年に熊野尾鷲道路が開通して。紀伊長島と熊野からも、お客さんが来てくれるもんで。
おなじ紀伊半島でも、車で20分行けば、海も、山も、感じが違うんだよね。1時間かけてわざわざ新宮から、なんべんも来てくれる夫婦の人らがありがたいってよ。
おかげさんで、子どもも学校にやれてます。うん。ありがたいよ。ほんまにありがたいんです。
いとう:これから、は?
うめ:2020年ごろに尾鷲南と尾鷲北のインターチェンジが開通すると、尾鷲のまちを素通りする人が増えるかもしれない。それまでの4、5年間に「ひともうけせな!」と思ってるよ(笑)。
いとう:そういう声は尾鷲じゅうあちこちで聞きます。夢古道おわせも同じ。そこまでにもうけておかんと、という感じはある。
あのー… もうけると言っても、お金というより、関係の貯金というか。「尾鷲いいね」と思ってくれる人が増えたら。もうひと頑張りだね。
うめ:うん、ほんとに。そうやと思う。
<お店の情報>
おふくろ
住所 尾鷲市小川東町31-15
電話 0597-22-9040
営業時間 11:30-14:30/17:00~20:30
営業日:不定休/席数:40席(カウンター、テーブル、座敷)/駐車場:
10台/尾鷲駅から車で5分
(写真と文 大越元)