尾鷲よいとこ定食の店Vol.4(鬼瓦)

 <尾鷲よいとこ定食の店>

このコラムは、漁港の町で地魚料理を味わう冊子 「尾鷲よいとこ定食の店」との連動企画です。夢古道おわせ支配人の伊東将志(いとうまさし)と、「尾鷲よいとこ定食の店」掲載店を訪ねて回ります。

第4回目は、鬼瓦さんを訪ねました。店名は“おにがわら”と読みます。今回は、よいとこ定の“煮魚定食”(1,000円より)と刺身定食・竹(1,500円)を紹介。

<鬼瓦の煮魚定食>

タレのしみこんだ煮魚で、白いご飯をいただきたい人には、ここ。

 

 

ブリのカマを中心にカンパチ、タイ、ムツ。魚種は海次第。一日置くことで身がやわらかく、脂がびゅうと回った魚を、注文を受けてから煮ます。ほろほろふっくらとした身に、濃いめの自家製タレが絶妙。トロットロになった骨の間の身がまた・・・うまいこと。

 

“港町の海辺にある食堂”といったふうの鬼瓦さんは、尾鷲駅から徒歩1分。電車で訪れる人も気軽に立ち寄れます。

 

 

土曜のランチどきを訪ねると、バスツアーのお客さんが帰り、片づけに追われているところ。「みっちゃーん、味噌汁おねがーい」「うつぼの唐揚げあがります!出したって〜」「ありがとーう!お会計」。

 

和気あいあいとした雰囲気の中、よいとこ定食をつくるのは、鬼瓦2代目の中野勝敏さん。

 

 

お父さんがはじめた店は、今年で41周年。店名は、瓦屋根のふちに設置する魔除けの“鬼瓦”に由来します。

 

伊東:僕ね、社会人1、2年目の頃、中野くんのお父さんにお世話になったんですよ。

 

お父さんが亡くなられて、もうどれくらい経ちますか。

 

鬼瓦:僕が18のときだったんで、18年になるんすね。高校卒業して、大学生になってすぐでした。卒業してから尾鷲へ帰ってきて。最初は運び番しよったすけど。厨房(ちゅうぼう)立ちはじめたのは25、26やなぁ。板前さんがいきなり「やめる」って。

 

 

伊東:せな、ならんくなったと。

鬼瓦:はい。それまで庖丁持ったことなかったっす。魚の捌(さば)きかたから覚えていって。味つけはお母さんしよったんです。それから10年になりますね。

 

 

伊東:お客さんには、何を味わってほしいですか?

 

鬼瓦:煮魚はもちろん、港町の刺身も食べてほしいですね。

都会から来る人の中には「熟成した刺身こそうまい」という人もおる。それもおいしさの一つ。でも、こっちやったら「さっきまでピキピキ動いとったんですよー」という、気持ち的には“船の上で食べる”ぐらいの新鮮さがウリやと思ってて。それを出したいんです。

たんまにですけど、お客さんから「かみ切れない」と。新鮮すぎて、身が固すぎるといわれることもあります。もちろん鮮度のいい刺身だから、なるべく薄く切っているんですけどね。

 

 

伊東:それにしても一切れが大きい。鬼瓦さんに来ると「港町の食堂で食べてる」って感じがします。ちなみに今日の刺身定食・竹は?

 

鬼瓦:マグロ、カンパチ、タイ、ブリっすね。早い時間やったら、カツオも入ったんすけど、朝の内にぜんぶ出ちゃって。仕入れは海次第、そういう日もあります。

煮魚と刺身、両方食べたかったら“松”ですね。尾鷲は、色々な種類のエビがとれるんです。オニエビの刺身が入ることもあります。

 

伊東:オニエビをお刺身で出すところは、尾鷲でもめずらしいですよね。

 

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伊東:お店の話から離れますけど、中野くんに聞きたいことがあって。2016年に、尾鷲駅前の児童公園でイルミネーションをやったじゃないですか。どんな思いではじめたんですか?

 

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鬼瓦:尾鷲と紀北町に住む高校生から30代までの若手が集まって。Freedom(フリーダム)という団体をつくって企画したんす。

「尾鷲になんかしぃたいな」。前から思いよったんですよ。でも何からはじめたらいいか、ずっとわからんかった。

僕、総合格闘技やっとるんす。松阪市で大会運営からしたことがあって。そのときに、イベントをやる流れがわかった。あとはやって改善、やって改善すね。みんな自分の小遣い持ち出しです(笑)。まちの、まちおこしっすけど。みんなでもりあがろらい、と。

 

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伊東:すごい評判よかったよね。

 

鬼瓦:僕、イルミネーション直前の試合で、骨折したんすよ。イベントの準備ばっかしとって、まったく練習しないまま臨んで。今まで71試合して、31勝34敗6分。これからも格闘技は続けますけど、僕も36なったし、若い子らと殴り合いばっかしぃよっても… あれじゃないですか。

 

次のステップいうか。

 

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伊東:尾鷲旬のこつまみバルにも、鬼瓦さんは積極的に関わっていくよね。去年は51店舗を2,000人が食べ歩いて。2017年は、10月28日ですか。

 

鬼瓦:実行委員長が先輩なもんで、生ビール1杯に刺身がついて500円でやらせてもらってます。バイト3、4人入れて。赤字覚悟、いや赤字です(笑)。もう、まちが盛り上がったら。

 

伊東:「昼も行こや〜」ってなるんだよね。うちの息子もそうだったな。

 

鬼瓦:ジュースやったら原価もそんなにかからんで、多めに入れてやったんす。

 

伊東:ビール注がんでも、けっきょく赤字やな(笑)。

 

鬼瓦:それと尾鷲でB1グランプリ、やりたくて。ここら辺のうまいもんぎゅっと集めて。「ちょっとそんなん一回やってみない?」。軽く話せる同年代の飲食店がいるのは大きいっすね。5、6軒集まったら、イベントもはじめれる。夢古道とも、なんか一緒にやりたいっすね。

 

伊東:中野くんたちの世代が、自分たちの手でまちを盛り上げていく。その感じええな。今日はありがとうございました。

 

<お店の情報>

鬼瓦

住所 三重県尾鷲市野地町12-31

電話 0597-22-8055

営業時間 11:00-14:00/17:00~21:00

営業日:不定休(月4回)/席数:100席/駐車場:10台/尾鷲北ICから車で3分。尾鷲駅から徒歩1分

 

(写真と文:大越元)

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